演劇

演劇と教育の可能性について|深いコミュニケーションが生まれる場所


演劇と教育の可能性

「演劇と教育って親和性が高いよね」

「中高生にコミュニケーションの楽しさを知ってもらうのに最適な手法かも」

週末、そんなことを大学時代の友人と話した。彼は企業に勤めるビジネスパーソンでありながら、公演を続ける役者・演出家でもある。その経験から、演劇の力を広く社会で活用できないかと挑戦を続けている。

私自身、中学1年生の時に劇作家・演出家の如月小春先生に出会い、彼女の主催する演劇ワークショップを数年間体験したこともあり、とても共感するテーマだ。

お芝居はあんまり上手にできなかったし、短い期間だったけれど、確かに私の原点とも言えるのがこの演劇ワークショップだった。
そこで学んだのは(如月が卓越した指導者でもあったからだが)演劇そのものよりも、表現する喜びだったり、多様な人とコミュニケーションする面白さだったり、他者と共に創り上げる楽しさだったり。あの経験がなければ、書くことや伝えることを仕事にしたいなんて思わなかったかもしれない。

楽しいだけが芝居じゃない。それをやることによって、癒しの効果もあるし、もっと深いコミュニケーションが生まれることがある。それは形となって残らなくても、生きていく上でのある種の自信や絆みたいなものになっていくことがある。
(如月小春 『ふじのくに 舞台芸術フォーラム’96 報告書』より)

如月の言う通り、どんなセリフだったか、誰と一緒だったかは忘れてしまったけど、心の奥底にたたみこまれた記憶は、今でも私を支え続けてくれている。

だから、社会人になって教育会社でたくさんの中高生たちと接するうちに、彼らにもこの力を体験してほしいと思うことが何度もあった。

自己肯定感が低い日本の中高生

いつも心にひっかかっているデータがある。

日本、米国、中国、韓国の4か国の高校生を対象とした国際調査(平成26年度)で、「自分はダメな人間だと 思うことがある」という質問に対して「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した日本の高校生は72.5%と高く、 米中韓を大きく上回っている(米国45.1%、中国56.4%、韓国35.2%)。

4年前の「私は価値のある人間だと思う」という質問では下記のとおり。

1位  米国・・・89.1%

2位  中国・・・87.7%

3位  韓国・・・75.1%

4位  日本・・・36.1%

やはり、目立って低い。

カルチャーの違いなどは多少あるとしても、自信が持てない、未来が楽しみと思えない、という高校生が多いのはわかる気がする。

中高時代というのは、偏差値や部活の成績などわかりやすい指標が全面に出てしまうなかで、それ以外の強みや才能は認められにくいし、そもそも本人すら気づいていないことも多い。競うことは要求されるけれど、共に在ることの大切さを実感する機会も少ない。自信や絆を強固なものにするには難しい時代なのだ。

学校現場で演劇ワークショップの活用を

人と人のコミュニケーションにとって重要なものが演劇にはあり、教育の根底にも、人と人のコミュニケーションがある。

だから、演劇と教育の親和性はとても高いはずだ。演劇の技法には、教育に通じるものがきっとたくさんあるだろう。

身体を動かすこと、むき出しの心で対話をすること、ありのままの自分を肯定すること。
演劇には子供から大人になるまでの複雑で繊細な心を支えてくれる力がある。
そこに学校や家庭は関係ない。センスも才能も、いらない。

教育現場は今大きな変革の只中にある。知識偏重からの脱却が進められ、思考力や表現力を重視する教育へと変わりつつある。そんななかで、演劇ワークショップが位置付けられていけばいいなと思う。今でも実践している学校はあるが、一般的に広がっているとは言えない。

指導者がいない、成果が見えにくいなどハードルはあるかもしれないが、友人のような学校外の力や先進事例を活用していけば可能性は大きいはず。微力ながら何かできないかなぁと考えてる。